映画「ルイの9番目の人生」は、とっても不思議な映画だった。
見ごたえはあったし良い話でもある。ただこの作品が描く主人公ルイと母親の歪んだ愛情から何かメッセージを受け取ろうと思ったら、少し難しそうだ。
話の構成について
ルイの語りで始まりルイの語りで終わる、昔話を聞かされるようなスタイルの映画。
ルイは毎年のように大きな怪我や病気をして何度も死にかけており、9歳の誕生日には家族とのピクニック先で崖から海に落ちてついに昏睡状態になってしまった、というのがプロローグ。
以降、2つの軸で話は進展していく。
- 昏睡状態のルイの思考や、記憶による回想が描かれるシーン(主にルイ、父親ピーター、精神科医ペレーズが登場)
- ルイが昏睡してしまったあとの現実での出来事を描くシーン(主に医者パスカル、母親ナタリー、警察などが登場)
ルイの思考や回想のシーンでは、ルイが過去に家族や精神科医とどんな会話をしたかが描かれたり、海藻に覆われた謎の生物が現れてルイと会話したりする。
現実ではルイの昏睡状態を治そうとする医者や、事故の原因を捜査する警察、そしてルイの母親の姿が描かれる。
この2つの軸が行ったり来たりしながら、「なぜルイは崖から落ちたのか?」「なぜルイは何度も何度も死にかけるような目にあっているのか?」が明かされていく。
監督のやりたいことてんこ盛り?
不思議な映画だった、と印象を受けたのはいろいろなジャンルが詰め込まれているからだろうか。
- なぜルイがこんな目にあうのか?という大きなスリラー
- プロローグは「僕、こんなに死にかけてるんだ、笑えるでしょ?」とコメディ調の演出
- ルイが死亡宣告後に息を吹き返すシーン、途中意識を取り戻すシーン、パスカルが謎の海藻生物と出会うシーンなどはホラー感たっぷり
- 謎の海藻生物とかいうファンタジー要素
監督が好きなものとかやりたいことをあちこちに散りばめたような、それでいてかなり上手にまとまっていると思った。すごい。
中途半端ではっきりしない、と思う人もいるだろうが、なんにせよ不思議な世界観の作品だと感じるだろう。
込められたメッセージを考えたい
何も考えないと「おお、いい話だったな、なかなか見ごたえもあったし、よかったじゃん?」で終わってしまいそうなこの作品。
ここからはネタバレありで、込められていたメッセージを考えてみたい。見ていない人はここでページを閉じて、映画を見てからまた来てね。
子供は親を見透かしている
「ルイの9番目の人生」には、子供は親が思っている以上に親のことを見透かしているから気をつけろよ、というメッセージが込められているように感じた。子供を子供扱いしてはいけないよ、隠し事は無駄だよと。
ルイが両親を見透かしているような描写は何度も出てくる。
ピーターが再婚であると知って、秘密にしようと言われてもナタリーに話したのはルイなりに「そのほうが夫婦にとって良い」と感じたからだと取れる。そんな問題は乗り越えて愛し合ってほしいと。
ピーターが本当の父親じゃないと知った上でルイはピーターを愛そうとしていたし、物語を最後まで見ればルイがナタリーのために問題児を演じていて、自分がナタリーの所有物であるという感覚も受け入れていたとわかる。
子供は子供なりに親のことをよく見ていて、考えて、期待に応えようとしているんだ。
だから夫婦の問題から子供を蚊帳の外にしたり、子供にはどうせわからないだろうとごまかしたり、そういうのは無意味なんだってこと。
この映画に出てくる夫婦はピーターの前妻のところ以外みんな不仲だ。不仲になってしまうのもわかるが、子供はそれも知ってるからな?という恐怖。
良好な夫婦関係と透明な親子関係を築くようにしたいものだ。
それでも歪んでるもんは歪んでる
ルイが両親に愛情を抱いていたのはわかった。ただし、親からの愛情が歪んでいれば子供の愛情も歪むというのも、ルイを見ているとわかる。
ルイがペレーズに話した処分権という考え方は、ナタリーがルイに対して持っている価値観を引き継いだものだというのは最後に判明する。(キャンディに毒を入れたのは処分権の許容範囲だ、という発言からナタリーが「ルイを処分してもいい権利」を持っているんだとルイは理解している)
崖から飛び降りたのだって「そろそろ同情がほしい頃なんだね、わかったよママ。僕、逝ってくる!」ってことだしね。
どうかしている、と思ってしまうが、そういう家で育ってしまえばそれが当たり前になってしまうんだろう。
加えてルイはナタリーの異常さに対して、死にたがっていたようにも見えた。昏睡も悪くない、なんて子供に言われたくない。
まぁナタリーの異常性のおかげでピーターが際立った。彼は良いお父さんだったと思う。ルイにはピーターの存在を心に強く生きてほしい。がんばれ!
まとめ
「ルイの9番目の人生」は見ごたえもあり、いろんなジャンルてんこ盛りで不思議な世界観が楽しめて、親子の愛情や感動もあるボリューム満点の作品だった。繰り返し見ても楽しめる。
なにか面白い映画ないかな?と探している人にオススメしたい。
ちなみに原作小説があるんだそうで、気になる。
以上、小山田でした。( ^ω^ )
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